NEDO Web Magazine(STG)

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【44】太陽光発電を主力電源へ ペロブスカイト主軸(2025年10月8日紙面掲載分)

2040年度29%に

日本における太陽光発電の技術開発は長く、第1次オイルショックを契機に1974年に策定された「サンシャイン計画」にさかのぼる。「新エネルギー」を冠する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)にとって、太陽光発電は1980年の発足以来の中核テーマであるが、2025年閣議決定された第7次エネルギー基本計画において太陽光発電が2040年度に23%から29%程度を占める最大電力となる見通しが示された。

また、2024年11月に経済産業省が発表した「次世代型太陽電池戦略」において社会実装が近い次世代型太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池を2040年までに約20ギガワット(ギガは10億)導入することが示された。これらを達成するため、一段上の技術開発を進める必要がある。

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太陽光発電開発戦略2025(NEDO PV Challenges 2025)における目指すべき姿

開発戦略を策定

そのロードマップが2025年3月にNEDOが策定した「太陽光発電開発戦略2025(NEDO PV Challenges 2025)」だ。国内外の市場・政策・技術動向を振り返り、(1)次世代型太陽電池の開発(2)導入拡大のための太陽光発電システムの開発(3)多様化するニーズへの対応(4)発電設備の長期安定電源化(5)資源循環を目指したリサイクルシステムの開発という五つの技術的方策を示した。

量産目指す

開発戦略の中心がペロブスカイト太陽電池の開発だ。大きな課題は発電コストであるが、例えば実用サイズで変換効率約15%、耐久性20年相当の技術を確立することで、20円/キロワット時以下のめどを得た。さらなる発電コストの低減に向け、品質を安定させつつ大量生産可能な量産技術を確立することが今後の目標だ。

2025年9月には、グリーンイノベーション基金事業において量産技術の開発とフィールド実証を行う新たな三つの案件を採択した。量産化に向けては、製造に適した材料、製造装置と製造プロセスの開発とその検証を行う。フィールド実証では、ペロブスカイト太陽電池の特長を生かし、耐荷重の小さい屋根やビル壁面などで、海外を含めた社会実装の加速に向けてユーザーと連携して行う計画だ。他にも、フレキシブルな太陽電池の設置・施行の安全性や信頼性を確保するガイドラインの整備、環境などに配慮した適切なリサイクルシステム技術の確立などに取り組み、技術開発で課題を克服し、世界に先駆けてペロブスカイト太陽電池の普及拡大を目指す。サンシャイン計画に劣らぬ成果を目指して技術開発を推進していきたい。

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NEDO
再生可能エネルギー部
太陽光発電ユニット 主査
鈴木 敦之(すずき あつゆき)
北海道大学大学院自然史科学専攻博士前期課程修了。2012年NEDOに入構し、クリーンコールテクノロジー分野や水素サプライチェーン分野に関する事業、経済安全保障重要技術育成プログラム、広報関係などを担当。2024年から現職。「太陽光発電導入拡大等技術開発事業」のプロジェクト・マネージャー。

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